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今月のOh!ススメ本

豊見城店 「金城」のOh!ススメ本

  • 2017年10月のオススメ本
  • 渚にて 人類最後の日
  • ネヴィル・シュート/著 佐藤竜雄/訳
  • 価格/1080円
豊見城店
金城
このいやはての集いの場所に
 われら ともどもに手さぐりつ
 言葉もなくて 
この潮満つる渚につどう・・・

かくて世の終わり来たりぬ
 かくて世の終わり来たりぬ
 かくて世の終わり来たりぬ
地軸くずれるとどろきもなく ただひそやかに 
                       T・S・エリオット

冒頭、この詩より「渚にて」は物語をはじめる。核爆弾を主とした第三次世界大戦が勃発、短期間にて戦争は終結するが、(ここでの戦争終結は勝ち負けのあるものではなく戦争が人類を道連れにしたことを意味している。)高濃度の放射能は北半球の生物を遍く死滅させ、真綿で首を締めるがごとく刻々と南下し人類に最後の日を迫る。生き残りの地であるオーストラリアでは人々が大戦前と同じく日々の生活を営んでいる。畑を耕し牛を飼い、ヨットレースやカーレースまでも開催されている。人心が荒廃することなく秩序が維持されている。故にこの物語には暴力的な表現が皆無だ。これは「善き人」のみに焦点を当てた結果なのか?否、狂気の沙汰だ。生き残った人々たちは自分の背中越しから絶えず聞こえる死神の吐く息に耐えられるはずがない。目を背けようにも背けた先に見えるのも約束された死。程なく全ての人々が死ぬ事実が現実感を喪失させる、そうして静かに狂っていく。狂えばこそ生きていられる世界。
しかしそんな世界でも愛だけは不変だと、この物語は教えてくれる。
壊れゆく世界で唯一の希望が 愛 であると。このことがこの作品を名作たらしめている。読了後、冒頭の詩を改めて読んでみると、こんな最後は嫌だと思う気持ちと、これで良かったんだと思う相反する気持ちが湧いてきた。

著者のネビル・シュートは第一次世界大戦、第二次世界大戦に従軍した経験を持つ。人類初の世界規模の戦争、一度に大量の人間を殺せる兵器の登場は世の中の空気を一変させたことだろう。言い知れぬ不安が人々を包んでいたのではないか。死が世界中に溢れている狂気の時代を生きた著者だからこそ書けた限りなく現実に近い非現実な作品である。

渚にて 人類最後の日
著者ネヴィル・シュート/著 佐藤竜雄/訳
出版社東京創元社
ISBNコード9784488616038
価格1080円
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