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今月のOh!ススメ本

上越店 「小林」のOh!ススメ本

  • 2017年08月のオススメ本
  • 仁義なきキリスト教史
  • 架神恭介/著
  • 価格/950円
上越店
小林
 「あいつら、言うてみりゃ人の罪でメシ食うとるんで」
表紙に紋々を背負った男のイラストと「キリスト教史」の文字。さらには帯にそんな一文が踊るさまを目にしたとき、何ごとか?と、思わずこの本を手に取って読んでみたのであったが、結果的には爆笑しながらキリスト教の歴史についてわかりやすく知ることができる良書であった。本書は、著者が「キリスト教の歴史をやくざに仮託して描こう」というテーマのもと書き表した小説・娯楽作品である。
冒頭の帯の文言は、16世紀に宗教改革を行ったルターが、当時巷に流布されていた「免償符」(一般的には「免罪符」)についてぼやいた言葉として登場する。ルターが、金を出して買いさえすれば「罪の償い」を免じられる「免償符」などという「馬鹿げた代物」を「任侠道」から外れたものとみなして、苦々しく思っているという場面である。
また、ある場面では「遠いエルサレムの地に巣くうイスラム組事務所にカチコミをかけ、奴らから縄張りを奪い取ることを目的としたやくざの大遠征部隊」という表現が登場する。何のことだかおわかりになるだろうか?歴史に詳しい方はお気づきであろう。13世紀の十字軍である。
 先にも触れたように、本書では、万事この調子でキリスト教徒を仮に「やくざ」とし、その歴史を「やくざの抗争」という見立てで描いているのである。さらには、そのやくざたちのセリフ回しは、著者が「仁義なき戦い」を座右の書としたと述べているように、広島弁風である。真面目なキリスト教の歴史にやくざ用語・やくざ口調というギャップが笑いを誘う。
 そういうわけだから、この本では、旧約聖書に登場するユダヤ教の唯一神(キリスト教の神でもある)ヤハウェは、ユダヤ組の組長で「ヤハウェ大親分」と呼ばれる大侠客であるし、作中で、その一の子分であるとされるイエスは、ヨハネやペトロといった「舎弟」たちから「イエス兄貴」と呼ばれる。言わずと知れたのちのキリスト組組長である。
キリスト教の歴史の担い手は、神でも聖霊でもなく人間である。したがって、当然良い面ばかりではない。例えば本書に登場するパウロやルターといったキリスト教史で重要な個人をとってみても、私自身、人格的にとても共感することはできない人物であった。人間の営みである以上、著者の言葉をかりれば「まるで聖的な雰囲気はない。全くの俗世間」である。キリスト教史を、俗世間の極みとも言うべきやくざに仮託して追うことで見えてきたのは、人間のどうしようもなさである。この本は、もちろんキリスト教を揶揄したものではない、キリスト教の意義をすべて否定しているわけでもない。だが、キリスト教史にかぎらず、人間の歴史にはどこか可笑しみがある。本書は軽妙な筆致で描かれていて楽しく、キリスト教の歴史の勉強にもなる。一読の価値がある本である。おススメである
仁義なきキリスト教史
著者架神恭介/著
出版社筑摩書房
ISBNコード9784480434036
価格950円
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