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今月のOh!ススメ本

豊見城店 「田中」のOh!ススメ本

  • 2018年01月のオススメ本
  • 漫画君たちはどう生きるか
  • 吉野源三郎/原作 羽賀翔一/漫画
  • 価格/1404円
豊見城店
田中
 長く読み継がれている名作が、2017年に漫画化され大きく話題となっている。私も10年ぶりぐらいで再読したところ、自分でも驚くほど大いに感銘を受け、とくに読むことと生きることの関係をめぐり思うところがあった。
 コペル君と呼ばれる少年とおじさんのやりとりが描かれる。おじさんはコペル君に、生きていくうえで大切なさまざまなことを、ノートを介して伝える。なぜ直接の対話ではなく、ノートだったのか。おじさんは、コペル君がおじさんの言葉をすぐに理解できるとは思っていなかったからだ。ノートに書かれた言葉は、後から読み返すことができる。コペル君は、そのつどおじさんの言葉に触れることができる。このことは、何を意味するか。
 おじさんは、最初のほうでおおむね次のようなことを書いている。きみに立派な人間になってもらいたいが、こうしたことについては、人から教わったり、偉い人たちの遺した書物を読んだりして、それだけでこと足れりとするわけにはいかない。きみ自身が生きていくなかで、しみじみと心から感じたり、心を打たれる経験をして、そのことについてよくよく考えていくことではじめて、そうした言葉の真実を理解できるのだ……。言葉が生きることによって裏打ちされ、生きることが言葉によって照らし出される。いわば、読むことと生きることが互いを測りあうのだ。とはいえ、こうしたことについて語るおじさんのこの言葉じたいが、おそらくコペル君にはまだよく理解できない。生きることを学ぶには時間がかかるように、そのことについて語るおじさんの言葉もまた、コペル君自身が生きていくなかでゆっくりと理解されていく。それには、ノートに書かれたおじさんの言葉を読み返すことが必要なのだ。
 こうした言葉を必要とするのは、私たちも同じであるように思われる。私たちは狡く、弱く、頼りない。すぐに忘れるし、ぶれるし、あきらめる。理想や理念やあるべき姿は、くりかえし言葉によって呼び起こされながら、そのつど新たに確認されながら、かろうじて目指されることができる。コペル君は、これから何度もノートを読み返すだろう。同じように、私たちは何度も本書を読み返す。おじさんは、そのたびごとに「こんなことでへたばっちまっちゃあダメだよ」と何度でも励ましてくれるのだ。
 それにしてもこんなふうに再読しうるとは10年前には思いもよらないことだった。年を重ねることでさまざまな書物と出会い直していけるとすれば、これほどの悦びはない。願わくは今年も、多くの出会いと再会のあらんことを。
漫画君たちはどう生きるか
著者吉野源三郎/原作 羽賀翔一/漫画
出版社マガジンハウス
ISBNコード9784838729470
価格1404円
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