静岡本店 「井谷」のOh!ススメ本

リウーを待ちながら 1
2017年11月のオススメ本
リウーを待ちながら 1
朱戸アオ/著
価格/680円
 本作の舞台はS県横走市。自衛隊の総合火力演習が有名で、地元FMラジオからは『美しい水!美しい空気!富士の麓で快適ライフ!!』と流れる、のどかな街である(静岡県御殿場市がモデルと思われる)。そんな「富士の麓の桃源郷」で、悲劇は突然に幕を開ける。
 吐血して倒れた自衛隊員と同じ症状の患者が相次いで死亡。病院に患者が詰めかけるものの抗生剤が不足。事態は悪化の一途を辿り、主人公の内科医・玉木涼穂は「煉獄」を彷徨うこととなる…。

 著者の朱戸アオさんは医療サスペンスの新たな書き手として、いま注目すべき漫画家の一人だ。前作『ネメシスの杖』は非常に完成度の高い医療ミステリで、個人的には「映像化してほしいコミックランキング」ダントツNo.1の作品である(映画・ドラマ関係者の方は要注目!)。
 本作は、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう感染症のアウトブレイクをテーマとした作品である。序盤から緊張感の溢れる展開で、読み始めた途端に一気に引き込まれてしまった。静かにジワジワと感染が広がり、平穏な日常が徐々に崩れてゆく過程がじっくり描かれており、読み応え抜群である。明日にでも起こるのではないかと少し怖くなるくらい、現実味のある作品だ。
 この作品にはスーパーな医者も、何でも治る特効薬も、どこからかやってくる救世主もおそらく登場しないだろう。「ぼーっとしているとここは 中世ヨーロッパになる」。そんな絶望的な状況で、それでも希望を捨てず命を救おうと奮闘する玉木たちと横走市の住民たちがどうなるのか。今後の展開が楽しみである。
 
 本書を読み終えた後には、タイトルの由来となっているカミュの小説をぜひお読みいただきたい。ネタバレになるので書名は挙げないが、実は本書の一コマに書影が描かれている。
 さらに感染症に関する歴史書2点を。『疫病と世界史 上・下』(中公文庫)は言わずと知れた世界史の大家マクニールの著書で、感染症の流行がどれだけ人類の歴史を動かしてきたかを描き出した名著である。そして『史上最悪のインフルエンザ』(みすず書房)は1918‐1919年のインフルエンザ(通称スペインかぜ)の記録を丹念にたどった一冊である。過去のパンデミックの事例から学ぶべきことは少なくない。関心のある方はご一読を。
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