静岡本店 「藤浪」のOh!ススメ本

トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉
2019年10月のオススメ本
トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉
西岡研介/著
価格/2640円
  著者西岡の単著としては12年ぶりになるこの「トラジャ」、ページ数はなんと600強。ちょっとした凶器です。厚くて重くて税込2.640円。でも、売れているんですよ。かなり驚き。世にノンフィクション好きがこれだけいたのかと再認識したほどです。お見逸れしました。本屋として反省しています。
前作「マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」(講談社)が刊行されたとき、まだ紙媒体でもノンフィクションの発表先は幾つもありました。同書の初出は「週刊現代」でしたし。いまや見る影もありません。今作のきっかけとなった短期集中連載を掲載した「週刊東洋経済」は、何とかその心意気を持ち続けていただきたいもの。
  「マングローブ」は、世界最大級ともいえる公共交通機関JR東日本がなぜ革マル派に支配されたのか、陰惨・卑劣な事件性のある出来事に対し警察ですら容易には手出しできない組織の実情とは、という内容です。組織の隅々にまで活動家を潜ませる様を、熱帯の河川に根を貼り巡らせるマングローブに例えてタイトルに置いてありますね。労組・革マル・活動家等々、現在はもちろん当時でも存在感を失いつつあったワード・フレーズが飛び交っていて、いちいちそれらの意味を調べながら読み進めた記憶が甦ってきます。
  新刊の「トラジャ」、今作で著者西岡の射程はJR東日本からJR北海道、はたまたJR貨物にまで拡がります。JR東日本労組「3万5000人」大量脱退、JR北海道の社長2人と組合員の相次ぐ謎の死等々、コピーには禍々しい文章が踊っています。が、それは嘘でも誇張でもありません。組合員の苛烈な状況、経営側のダメっぷり、それらを繋ぐ歪な労使関係等々、これって本当にいつも使っているあの会社の実態なの?という気持ちになりますよ、読み進めると。もう少し政治的な決着というか配慮というか、なにかしら施してやんなよって気持ちにもなるし。ま、ダメなんでしょうけど。
  牧久の「暴君」(小学館)や「昭和解体」(講談社)、あるいは松本創の「軌道」(東洋経済新報社)など鉄道会社の実態を追った秀逸なルポが近年刊行されています。その系譜に「トラジャ」を配してもいいのでしょうが、ちょっと異質かなと思われます。救われないといいますかね。特に、北海道。厳しいなあ。

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